よしもとばなな著 『キッチン』- 助けてくれる人がいる、居ていい場所があること

小説を読みたい気分で本屋さんにふらふらと出かけていき、新しい文庫ではなかなかおもしろそうな小説を見つけられず、「ならば昔のを読もう、世界で読まれる日本の小説って気になるぞ」とよしもとばななさんの『キッチン』を手にとりました。キッチンが好きというのもあって ;)

キッチン (新潮文庫)

キッチン (新潮文庫)

1988年に書かれた小説ですが、古いと感じることはなく ー もちろん携帯電話やインターネットは出てこないのだけれど ー キッチンが大好きな主人公がたったひとり残った家族の祖母をなくして、そのあと祖母が通っていた花屋さんの店員さんの家に居候することになって … という話はなんか自分の身にも起こりそうで、次へ次へと読み進めてしまいました。幸いにも主人公のように大事な人を喪失するような状況にはないけれど、他の人のおうちにお邪魔させてもらったり、誰かのことを心配しておいしいと思ったカツ丼を遠路はるばる届けに行ったり、そういうことは普通にありそうで。どうしようもない喪失感に襲われているような状況でも、助けてくれる人がいたり、居ていい場所があったり、日常の中に希望が見出せるんじゃないかなというのを思い出させてくれます。

まだまだ捨てたもんじゃないね。

そんなことを思いました。よい小説。今年の秋は文庫小説を開拓してみたいなと思うのでした :)