小田実 著 『何でも見てやろう』―1960年代の貧乏旅行記が妙におもしろかったのだよ!

何でも見てやろう (講談社文庫)

何でも見てやろう (講談社文庫)

昨年 @daaaaai さんがビブリオバトルで紹介していたのを聞いて気になっていた本。母が以前から読め読めと言っていた本でもある(^^; この本の紹介は↓のビブリオバトルの名トークに譲ります。旅好き、世界事情好きは読みたくなること請け合いです。

7月に読み始めて、旅の道中や日々のちょっとした時間に読み進めていました。1960年代の貧乏旅行記はおもしろかった・・・!時代は違って「まだ人種差別があった時代だったのか・・・」などと驚くところもあるものの、何だろう、相通ずる旅の感覚みたいなものがあって、どんどん行きたいところが増えていきました。

中でもギリシャに一番行ってみたいと思っていて、今は当時と状況は随分違うのかもしれないけれど、行きたい!行きたい行きたい!近所だしヨーロッパにいる間に行っちゃうぞ。ヨーロッパの醍醐味。

私の考えでは、われわれ日本人自身のことはカッコに入れるとして(日本人はギリシア人と同じくらい親切だという説があったが)、世界各国のひとびとのなかで、ギリシア人ほど、客好き、外国人好きの国民はないと思う。理屈も何もない、彼らは外国の旅人にむやみやたらと親切なのであった。ギリシア語には、「フィロクセノス」(外国人好き)というコトバがあるが、おそらく、ギリシア語がその意味をただ一語でもって言い表すコトバをもつ世界で唯一の言語ではないか。

p295 パン屋のデモステネス君、仕立て屋のアリストテレス氏――ギリシア無銭旅行

ギリシアの農村というのは、たしかにひとは働いているのだが、それは日本のように忙しく死に物狂いでたち働いているというのではなかった。貧しいことはひどく貧しいのだが、それでいて、えらく牧歌的でのん気であった。喫茶店でぼんやり時間を過ごしている彼らを見ると、この連中、いったいいつ働くのかしらと疑問に思えてくる。

p302 パン屋のデモステネス君、仕立て屋のアリストテレス氏――ギリシア無銭旅行

あとは、わくわく旅に出て、でも、旅に疲れてきた・・・という記述にとうとうきたかとハッとし、日本に戻ってくるところも印象的で、「そうそう旅ってそうだよね」と。何というか、著者の小田実さんと一緒に旅をして、読み終えると同時に旅を終える感覚でした。

で、これ、1960年代の話なんですよね。半世紀前(!)の貧乏旅行記、手に取ってみてはいかがでしょうか(^^)

■ 同時代の明るい旅行記 小澤征爾 著 『ボクの音楽武者修行』

ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)

ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)

豊かなアメリカから貧困の最底辺までを味わったという小田実さんの旅行記とは一転、たしかに超絶裕福旅行記というわけではないのですが、明るくひょいひょい世界を飛びるき若き日の小澤征爾さんの旅行記。この本は留学面接の時に手にとった本で、うう、がんばりたいなあと去年の秋口に思ったのが懐かしいです。ベルリンに行きたい行きたい!と思っていたのもこの本がきっかけ。こちらもオススメ。