食べると生きるを気持ちよく思いだす1冊 『食べる女』

先日、何かの拍子にムショウに『食べる女』を読みたくなり、手に取りました。「食べる」ことと「生きる」ことを気持ちよく考えられる/思い出せる短編集です(男の人が読んだらどう思うんだろう。そこはわかりません…)。実は以前読んだことがあったのですが、よい感じに忘れていて(部分的に覚えていて)、懐かしくもあり、また境遇も変わって新しい視点で楽しくもあり。

爽快なややエロ。そういう行為も、ともすると、食事と同じで、相手を食べているのかもしれないですね。おいしい物を大事に丁寧に食べるか、ファストフードを適当に食べるか。前者がよいに決まっているじゃない。そんなことを考えつつ、ちょいちょい読み進めて、今さっき読了しました。紹介します。よい本ですよ!

食べる女 -スローフード・スローセックス-

食べる女 -スローフード・スローセックス-

食べる女 (新潮文庫)

食べる女 (新潮文庫)

# 単行本の方が表紙は好き。…が、やっぱり遊行浮浪の民、持ち歩きやすさで文庫を選択。古書でふにゃふにゃしていますが、京都のお友達で読みたい方いたら言ってくださいね。新年早々お渡しします!

ニヤリとしてしまうよい話が多い中、ささったものを3本厳選してみました。

  • セックスとラーメンの方向性 p27~
  • リベンジ p237~
  • 桜下美人 p253~

小説なので、中身は読んでのお楽しみですが、「ああ、もう最高!」と思った箇所をいくつか抜粋してみます。

ウダツはあがらないけれど、みんなすごく気持ちがキレイだ。
p216 「多忙少女」

「女はね、季節に寄り添って暮らしていれば、身ぎれいでいられるんだよ」(三世代女系江戸っ子の長、おばあちゃんの言葉)
p257 「桜下美人」

「お前、あれはいい男だよ。食べ方を見れば、その人間の品性がいちばんよく分る。あれはいい。信用できる」(同じおばあちゃんの言葉。おばあちゃんのおはぎを食べた男の人を見て。)
p259 「桜下美人」

他にもどきっとする名言満載、おいしそうな食材や料理の描写満載。私は「花嫁の父」に出てくるポテトサラダを早速作ってみたくなりました。食べ物好きにはたまりません。

最後に、last but not least なのですが、冒頭の「スローフード・スローセックス宣言」も素敵です。いわゆる単にのろのろ現実逃避的な「スロー(笑)」ではなく、何て言えばいいんだろう、しっくりくるスローです。頭に刻みたかったので、手で打ってみました。

スローフード・スローセックス宣言

ひとはおいしい食事をすると、体が元気になる。いとしいセックスをすると、心がやさしくなる。

スローフードは、「ゆっくり食べる」ことではない。特別なごちそうでもない。
スローセックスは、「ゆっくりやる」だけではない。上手なテクニックでもない。
あなたの心と体が本当に求めるものがスローフード・スローセックスだ。

それを知るためには好奇心が必要だ。無気力・無自覚であってはならない。さもないと、微妙な味覚(性感)が育たず、食物(人間)の多様性に気づくことも、感じとることも、受け入れることもできない人間になってしまう。
それではつまらない。生きている限り、自分を、世界を、楽しまなくては。
人間の多様性は可能性なのだから。

そろそろお手軽なファストライフから脱しよう。
自分の心と体で感じとり、判断して、それに依って生きるために。

ひとはおいしい食事をすると、体が元気になる。いとしいセックスをすると、心がやさしくなる。

健やかな体とやさしい心があれば、ひとは誰かを愛したくなる。愛する力が湧いてくる。
だからこの暴力と差別と戦闘の絶えない世界にあってこそ、
愛する力を呼びおこすスローフードとスローセックスを決して手放さないこと。
そして今このときから、ささやかで大切な、
あなたのスローフード・スローセックスを始めてみよう。

ああ、よい本だった。読後感は、「ごちそうさまでした!」という感じ(^^)冬休みの軽い読み物としておすすめです。

※ 古書でふにゃふにゃしていますが、京都のお友達で読みたい方いたら言ってくださいね。新年早々お渡しします!