吉成真由美 編『知の逆転』 - ダイアモンド、チョムスキー、ミンスキー他 インタビュー集

知の逆転 (NHK出版新書)

知の逆転 (NHK出版新書)


夜寝る前にあとちょっと、あとちょっとと読み進め、読み終わりました。

銃・病原菌・鉄』のジャレド・ダイアモンド、普遍文法を提唱し政治に関する言論も活発なノームチョムスキーなど、6人のすごい学者へのインタビュー集で「よくまあこんなに豪華な人たちにインタビューできたもんだ!」と。

ブログなのでごくごく個人的な感想を書こうと思います。

個人的におもしろく、同時に、そこを突かれると痛いなあ … と思ったのは「どう仕事をするか」というところでした。チョムスキーは「他の人たちと協力して独自の創造的な仕事をする」ことが大事で、「本当に重要な仕事は、大抵他の人との協力の下に行なわれる」と言います。これ、私がまだまだうまくできないことです。最近随分よくなりましたが、未だに自分の考え、アイディアが批判されて傷つくのがこわいんですよね。で、ひっそりやる → フィードバックない → 傷つかないけれどよくならない … と。

人工知能の父マービン・ミンスキーは「科学の歴史を振り返ってみると、叡智というものは、「個人知能」によってもたらされているのがわかります」「科学の分野では革命的なことはいつも、一人二人の人間から始まっています」として、集合知については可能性を認めつつも「新しいアイディアを抑圧しようとする集団の危険」を危惧しています(集合知?5000万人がブッシュを大統領に選んだんだよ!)。遺伝子の二重らせん構造を発見したジェームズ・ワトソンも「あくまで「個人」が際だつ必要がある。科学を促進させるということは、とりもなおさず「個人」を尊重することです。」と個人を強調しています。

一見すると、チョムスキーと、ミンスキーとワトソンの主張は対立するようにも見えますが、ワトソンのインタビューを読み進めると「二人でチームを組むのが理想」「(一人で成功する人もいるけれど)でも一人でやっていると、往々にして自分の考えの枠から踏み出せなくなってしまうものです。二人なら他に誰一人として自分たちがやっていることを理解して認めてくれなくても、少なくとも見方が一人はいるということになる。とても難しいことをやっている場合、もう一人一緒にやってくれる人がいるほうがいい。」と言っていて、ミンスキーのインタビューも読み直してみると、漠然とした「集団」の知に懐疑的なのであって、一人孤高に仕事をすべしと言っているわけではないんですね。

傷つくことを恐れずに、自分の考えを話して、一緒に仕事をできる人を見つけたいなと思うことしきり。いくつかのプロジェクトについてはそれができるようになっていて、少しの進歩は感じつつも、まだまだだなあと偉大な知識人たちのインタビューを読みながら思うのでした。

そのほか、インタビュイーの独自の考え方やポリシーが語られていて、なるほどなあと思ったり、シニカルな指摘にはははと笑ったり、そうだよねとうなずいたり。各インタビューの末尾におすすめの書籍が挙げられているのもよかったです。

偉大な知識人の世界の見方に触れられる一冊。おすすめです :)