リチャード・フロリダ著 『クリエイティブ都市論』 ― 真剣に住む場所選んでいますか?21世紀遊牧民的教科書

クリエイティブ・クラスの世紀』が有名すぎるリチャード・フロリダ教授の著書です。

「何(仕事)」をして「誰(伴侶・仲間・家族)」と過ごすかは人生の重要な問題としてよく語られますが、「どこ」には結構落ちていがちじゃなかろうか、これ結構大事だよ、という内容です。

クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める

クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める

大好きな本で、ことあるごとに読み返しています。もう10回引越しをしていて、短期の移動や移住も大好きときたら、この本はたまらない(^^)

改めて読み返してみて、おもしろいぞと思うところが3つ+αあったのでメモがてら書いておきます。

◆ 近しい人と毎日欠かさず会える価値は10万ドル!?

 ロンドン大学の経済学者ナッタブド・ポウドサベーは、二〇〇七年に興味深い研究を行っている。その内容はアンケート調査によって、頻繁に会う友人や親戚の金銭的価値を試算するものだった。彼によると、友人や親戚と毎日欠かさず会えることは一〇万ドル以上の追加収入に匹敵するという。たとえば、家族や友人に定期的に会える場所から、はるか遠くへ引っ越したとする。その喪失感は一三万三〇〇〇ドルに相当するというのだ。
 さらにポウドサベーは、自分の時間について常に意識的に選択することが重要だと強調し、このように述べている。「高収入を得ることも、安定した人間関係を築くことも、ともに時間と労力を要する。したがって、お金と友情のどちらにウェイトをおくかは、個人の価値観次第である」


p104 第2部 場所の経済学 - 第5章 移動組と定着組

このあと、著者は「人間関係に適正な値段を付けることが可能かどうか、私にはわからない。」としていますが、私はいくら失っているんだ…。

上の引用の中で著者が言及している論文は「Nattavudh Powdthavee "Putting a Price Tag on Friends, Relatives and Neighbors: Using Surveys of Life Satisfaction to Value Social Relationships," Journal of Socio Economics, 2008」。

◆ ひきこもりと社交

きわめてクリエイティブな人々は、他者と活発に交流する時期と、深く集中する時期を繰り返す傾向にある。また、彼らは高揚状態にあるときが最も満足度が高い。


p185 第3部 場所の心理学 - 第9章 輝ける幸せな場所

「クリエイティブ⇒社交とひきこもり」なので、「社交とひきこもり⇒クリエイティブ」とは言えないのですが、どちらかに偏らないように気をつけたいなと、読む度に思って気に入っている部分。この章には、高揚感を感じて深く集中している状態「フロー」の概念を提唱したミハイ・チクセントミハイについても書いてあって、『フロー体験 喜びの現象学 (SEKAISHISO SEMINAR)』などいつか読みたいです。

◆ 通勤の負荷

●移動手段と通信インフラ
移動手段が充実しているかどうかは、個人の日常的な幸福感を決める重要な要素でもある。幸福論を専門とする心理学者によれば、場所に関連したストレスの二大要因は長距離通勤と交通渋滞である。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンらが、人々の日常的行動に関する詳細な記録を基に研究を行ったところ、人が一日のなかでもっとも苦痛を感じる行為は通勤であることが判明した(当然のことながら、最も楽しい行為にランクされたのは「親密な人といること」である)。

p 268 第3部 場所の心理学 - 第12章 最高の居住地を見つける方法

このあと、国勢調査局のウェブサイトで通勤時間に関する詳しいデータを見たり、地元のコミュニティサイトニュースで交通事情を見たりするといいよと書かれています。「そこまでする!?」と思う人もいるかもしれませんが、大事なことだと思います。京都に戻って、通勤時間の読書はできなくなってしまったものの、自転車生活で一気にストレスなくなりました。

移動手段と通信インフラという点では、「大規模なハブ空港は近くにあるか」「ウェブへのアクセスはすぐに確保できるか」といったチェックポイントも挙げられていて、大事だ大事だと。

◆ まだ消化しきれていないけれど・・・社会資本とロバート・パットナムについても気になる

遊行浮浪の民のソーシャルキャピタルクラウド上に蓄積されたりして・・・などとも思うのでした。


そんなこんなで、何度読み直してもおもしろい『クリエイティブ都市論』。うろうろするのが好きで、場所にこだわりたい21世紀のグローバル遊牧民に特におすすめです。著者やこの本の動画がYouTubeにあったので貼っておきます(^^)

あと、もうちょっと前の本になりますが、ダニエル・ピンク著『フリーエージェント社会の到来』も合わせておすすめです。

フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか

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