『完全なる証明』 − 歴史背景も読ませる!ポアンカレ予想 数学ノンフィクション

ビブリオバトルでサイエンス読み物の話になり、ガジェット通信の「なぜ日本では楽しみとしての科学が定着しないのか」を思い出し、アルバイト先で「サイエンス読み物の記事を書きたい!」とわーわー言っていたら、後ろの席の id:tomomi_keep さんが『完全なる証明』を貸してくださいました。

完全なる証明

完全なる証明

日々、布団の中で読み進めて、さっき読み終わりました。

ポアンカレ予想を解いた数学者ペレルマン博士の生い立ちから、ポアンカレ予想を解いて、そのあと消息を絶つまでを描いたノンフィクションです。

これがなんと、本当に読ませます。この本をこんなにも良書にしているのは、著者と訳者ふたりの女性によるところが大きそうです。二人についてそれぞれ。

著者のマーシャ・ガッセンさんは、ペレルマンと同時代にソ連で教育を受けて、かつペレルマン博士と同じユダヤ人(ペレルマンユダヤ人)で、この人以上に時代背景を含めて、本書のテーマを描ける人もいないでしょう。

また、訳者の青木薫さんなくしてもこの本は成り立たないはず。科学書の訳に定評のある青木薫さんの訳は、安心して読める以上に、美しくて(本当に)ほれぼれします。また、巻末の訳者あとがきにも書かれているのですが、日英でそれぞれ著者の原稿を元に編集した結果、英語版の『Perfect Rigor: A Genius and the Mathematical Breakthrough of the Century』とはかなり違う構成になっているとのこと。で、大事なのはここ:日本語版の方がよく仕上がっているようです!GJ!(京大理学部卒、理学博士、翻訳家って素敵、憧れます・・・)

そんなこんなで、数学はちょっと・・・という人も、時代背景や、数学界の諸々など、十分楽しめます。まだ文庫版が出ていないのだけが玉に瑕。年末年始のこたつ読書の友におすすめです(^^)

■ 余談1: ポアンカレ予想に関するNHKの番組もオススメ

NHKオンデマンドの特選ライブラリで、315円で見られます。以前見たのですが、読み終わってから見てしまいました。

<番組のページ>

NHKオンデマンドのページ>

訳者あとがきでは、この番組に触れていて、とかく「宇宙の形に関する予想」として取り上げられる誤解を指摘しています。といっても、それでもなお、本と番組それぞれ補い合い、とても楽しめることは確かです。本と合わせて動画を見る醍醐味ですね。

■ 余談2: 『完全なる証明』を読み終えて、読んでみたい本

青木薫さんが訳した本を読みたい!原著がサイモンシンさん、文庫版も出てるとあらば手に取らないわけにはいきません。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

暗号解読(上) (新潮文庫)

暗号解読(上) (新潮文庫)

暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)

暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)

クレイ研究所の運営に当たっている(今もかな?)ジム・カールソン(Jim Carlson)さんが、数学について多くを学んだという『数学とは何か』も気になります。

数学とは何か

数学とは何か

大学の図書館にあるようなので今度チラッと見てきます(^^)

■ 余談3: 冒頭のサイエンス読み物の記事

好奇心を刺激する!はてなブックマークで人気の「科学・技術の読み物」 - はてなニュース
良書揃いですよ!