この一週間に読んだ本を2冊 『ウィキリークスの内幕』『虐殺器官』
地震が起きてから、ウェブに文章を書く気になれなくて、避難所からの現状報告など、最低限のポストをするのみでした。
ただ、少しずつ平時のモードに戻さないと…という気持ちもあり、これまで普段してきた「文章を書くこと」で、それを試みようと思います。何を書こうかと考えると、やっぱり本についてかなと。こんな時でも、私を随分落ち着かせてくれたのは、活字であり、本でした。
この一週間に読んだ本を二冊紹介します。
■ 『ウィキリークスの内幕』/ "Inside WikiLeaks" Daniel Domscheit-Berg 著
- 作者: ダニエル・ドムシャイト?ベルグ,赤根洋子,森内薫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/03/11
- メディア: 単行本
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Inside WikiLeaks: My Time with Julian Assange at the World's Most Dangerous Website
- 作者: Daniel Domscheit-Berg
- 出版社/メーカー: Jonathan Cape
- 発売日: 2011/02/15
- メディア: ペーパーバック
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内部告発組織「ウィキリークス」でスポークスマンを務めたダニエル・ドムシャイト-ベルグ氏の著書。著者は1978年生まれで、近い世代なんですよね。駄目駄目な私を棚上げして書くと、会社を辞める時に思ったこと、世界に対する問題意識に多いに共感する部分がありました。私たちは考えなければいけない、でも世界は必ずしもそうではない…と(多分)思っているところも。著者がテレビ番組に出演した際のエピソードをどうぞ。
私は答えた。確かに、私の人間観はかなりかなりポジティブです。本来、人間には、知りたいという興味が備わっているんです。でもメディアや政治や上役によって無知なままにされているんです。舞台裏について十分な情報を与えられれば、誰だって正しい行動ができるようになるし、正しい判断を下せるようになるんです。
あなたの体験をふつうの人にあてはめるわけにはいきませんよ、とディレクターは言った。複雑な背後関係に興味を持つ人なんてそうそういませんよ、と。できあがった番組をテレビで見たとき、いったいどちらが原因でどちらが結果なのだろうと思った。私が出演したのは三十分番組だった。そのうち、ウィキリークスに関する部分は十分で、あとの二つのコーナーは「壁崩壊――そしてベルリン中がテクノダンスを踊っている」と「ミス・プラチナ――本物のレディー・ガガ」だった。世界をもっとよくするために三十分すべてをウィキリークスに当てるべきだ、と言いたいわけではない。ただ、どっちが先何だろうと不思議に思っただけだ。番組が下らないから視聴者がバカになるのか、視聴者がバカだからくだらない番組が作られるのか。もしかしたら、「もっといい番組を作れ」と要求できる立場に視聴者を置くことも必要なのかもしれない。
p62
さらに、読み進める内に、著者の見識の広さや、技術力を目の当たりにするのですが、ただただ「世界って広い、すごい人がいるなあ」と圧倒されます。といっても、「あーあ、私って…」としょんぼりするというより、わくわくに近いです。
前半半分を邦訳で、残りの半分を英訳で読んだのですが(原著はドイツ語)、若干邦訳と英訳でトーンや訳し方が違う部分があり、また、邦訳からは著者が動画で語る様子より硬い印象を受けるなど、ちょっとした違和感も。
ただ、そんな細かいところは置いておいて、ウィキリークスの中心にいた人だからこそ書ける一冊、読む価値は多いにあります。何で今ウィキリークスの投稿窓口が閉じているのかといったところも知れるし、とかくウィキリークスの顔として取り上げられがちな創設者のジュリアン・アサンジ氏のイメージにもほどよくバイアスをかけることができます。
ウィキリークスを離れて、著者は「オープンリークス」というプロジェクトに着手しています。プロジェクトを説明する様子も合わせてどうぞ。
あ…あとこれも(^^; 傑作です。
■ 『虐殺器官』 伊藤計劃 著
- 作者: 伊藤計劃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/02/10
- メディア: 文庫
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ビブリオバトルの常連さんに貸してもらいました。多分、人生で初めてきちんと読んだSFだと思います。こちらも著者の博識ぶりにびっくりする本。あまり書いてしまうとネタばれになるので書けないのですが、何が虐殺「器官」なのかというところが、こんな発想なかった…と。アルバイト先でお世話になっている方から、オーストリア行きのお餞別に同著者の『ハーモニー』をいただいていて、渡欧を前に読んでしまいそうです…というかもう読み始めています。
著者のブログも少しずつ読み進めたいです。
伊藤計劃:第弐位相