再読 『語学力ゼロで8ヵ国語翻訳できるナゾどんなビジネスもこの考え方ならうまくいく』

nヶ国語(n>2)を駆使するマルチリンガルな状態やそういう人に興味があって、再読しました。

誰にでも超絶おすすめとはいいにくい本かもしれません。前回読んだ時にも思ったことなのですが、へりくだって(語学力ゼロなのに・・・などなど)いるのに、自分はこんなに・・・という前書きと、お説教ぽいのところが私は苦手で、あと、ライフ八苦が苦手な人(私)も本書の雰囲気は苦手かも。確たる目的がないと読み切るのはきついです(==)

ただ、学ぶところが多いのもまた事実。ということで、ネガティブな話はここまで。

何でこんなことが可能かっていう種あかしをしてしまうと、特許翻訳というものすごく狭い分野にしぼっているというところがキモじゃないかなと。小説だったら無理(^^;その他、入力速度を上げるには、単語登録や置換を駆使しましょうといったテクニックが紹介されています。

おもしろいなと思った箇所を備忘録的にメモしておきます。

◆ 未知の言葉で書かれた文献を訳したという事例は過去にもあった

今をさかのぼること約240年、オランダ語で書かれた『ターヘル・アナトミア』が『解体新書』として世に出たとき、翻訳を手がけた杉田玄白中川淳庵オランダ語をまったく読めなかったことが知られています。 P37

その他、辻谷真一郎さんという現代の医薬翻訳者が現代ギリシア語の翻訳に取り組んだというエピソードも引用されています。引用を引用すると、未知の言語の翻訳は以下のような作業のようです

調べのついたものを手がかりに考えうる限りの仮説を立て、矛盾のあるものを順に棄却してゆく。この気の遠くなるような作業の果てに、たったひとつの整合性のある文章が残る。 p38

◆ 頭を翻訳対象の分野に慣れさせる

資料代は惜しまず、やさしいものから専門的なものまで広く浅くあたりまくるという著者。これ、翻訳でなくても使えます。Google日本の村上会長も『村上式シンプル仕事術―厳しい時代を生き抜く14の原理原則』の中で、営業職時代のエピソードとして似たようなことを書いていました。

似たような技術内容について書かれた特許明細書を、英語と日本語のそれぞれで数十件ずつ読みます。それ以外に、該当する技術に関する専門書も、英語と日本語のそれぞれで目を通します。このとき、隅々まで精読するのではなく、・・・ p39

その業界の言葉や表現、ひいては思考法にも慣れられて○

◆ 英語は大事だと思う

日本語、英語以外の言語で書かれた文書に当たる時、日本語以外にも、英語ができると参照できる
資料の量が段違い。

日本語を介在させずに英語圏での出版物に目を向けると、どんな本でも選択肢が驚くほど多くなります。英語圏の豊富なリソースを抜きにして、品質を語ることはできないというほど、多言語翻訳では頻繁にお世話になっています。 p41

英語はしっかり読み(書き)できるようになっておくのが大事だと思います。以前、遊行浮浪の友人と話していた時にも「英語で検索しないなんて!」という話に。

英語のウェブページを参照しないなんて…!と言われて、そう思った - aki note

ドイツ語を勉強していて、ブートストラッピング的に日英独を往復してドイツ語文を作る時にも思うことです。

◆ ただ訳すだけでは駄目、コンテキストに基づいて訳せることが大事

業界で使われる専門用語は、和英辞書ではずばりと出てこないことが多いです。しかも直訳的な英語ではなく、その世界でふつうに使われている単語にしなくては仕事になりません。 p50

既存の文を「真似る」のが手っ取り早いというわけです。コツは、勉強するのではなくて、調べて読むこと、訳すのではなく真似ること、ですね。 p55

Googleを使ってこれができるよという話になるのですが、このテクニックについては、『Google 英文ライティング: 英語がどんどん書けるようになる本』に詳しいです。また、「真似る」に関しては、前出のGoogle日本の村上会長の『村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける』に「英作文」ではなく「英借文」という名言も。

◆ 人とコンピュータと共同作業

独立した当初から私は一人で完璧に仕上げようとなどとは思っていませんでした。あくまでお客様と協力しながら「一緒に」問題解決をするという姿勢です。 p63

全体を機械翻訳するか全体を人間が訳すかという両極端ではなく、まずはパソコンと人間が「役割分担」をします。 p164

賛成。私はコンピュータと仲良くしたいです。もちろん人とも(^^;双方が得意なところで協業すればよいのだと思います。で、そんな時に以下が大事。人間も完璧でなけりゃパソコンも完璧ではないのです(^^)

パソコンと役割分担するときは、条件設定に完璧さを求めすぎないことが重要です。 p176

パソコン大好き、仲良くしたい。

◆ 訳してまた訳しなおす

翻訳者の母から習って以来、よくやるのですが、辞書である単語を調べたら、逆向きにも調べて、おかしな訳になっていないか確かめます。日英で引いたら英日も引く。これ、最近ドイツ語を勉強し始めて、機械翻訳でもやるようになりました。

本書には、訳した文書をチェックする時に機械翻訳が使えるよと書いてあります。

主語と動詞の数の不一致をはじめとして(数の不一致?)、文法的に細かいミスをゼロにするのはなかなか難しいのです。そこで、英和用の翻訳ソフトに自分の書いた英文を確認してもらうことにしました。(中略)文法的な誤りがあると、明らかに不自然な翻訳文が出力されます。 p177

ふむふむなるほど。

備忘録メモはこのくらい。翻訳をする人、私みたいな興味の人は読んで損なしの一冊。ただし、語調など苦手と感じる人はいそうです・・・(もったいない)という一冊です。




その他、個人的なメモ

  • ドイツ語単語を解読する時に一文字ずつずらして辞書を引いた p60
  • 複数の言語で出版されている専門書 Google Booksのngram indexで掘り返せないかな
  • 『図書館にきけ!』 p91
  • 辞書の二度引きをなくす p134
  • Wordのマクロを活用する
  • 紙資料はPDF+OCR