「ひたすら前向きに学ぶ」と「やってもできないと知って幸せになる」

ある意味対極にある二冊を併読していました。『ウェブで学ぶ』と『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』です。どちらもおすすめですが、二冊併読するのはもっとおすすめです。

梅田望夫, 飯吉透 著 『ウェブで学ぶ』

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)

アルバイト先でいただいて読みました。発売直後に買おうかなとも思ったのですが、ひたすら明るく前向きにウェブで学ぶことの素晴らしさが説かれていたら…と若干引き気味で迷っていました。

実際に読んで見ると、確かにウェブで学ぶことが熱く語られているのですが、一方でウェブで学ぶという行為や動きを暑苦しく感じる人もいるだろうねという点にも触れられています。あとは、ウェブで学ぶ万能!とただただ礼賛するのではなくて、膨大なコンテンツからどう興味に合致するものを見つけ出すのは現状困難だし、みんながみんな学習のモチベーションを維持できるわけではないなど、ウェブで学ぶことについてまわる問題についても議論されていて、何というか、読み終える頃には若干引き気味だった気持ちも薄らぎました。ちょうど読み始めた頃に、iTunes Uで提供されている東大の「学術俯瞰講義」がおもしろいよとビブリオバトルで教えてもらったのもよかったのかも。

http://itunes.apple.com/us/podcast/id275343660

この本を読んでよかったのは、漠然と「講義公開の流れはあるな」と個別に講義を楽しんでいたところで全体像を把握できたこと。iTunes UやOpen Course Wareから興味が広がって、時と時間を超えて日と共に学ぶことを考え始めたこともよかったです。

というわけで、私と同じ気持ちで読むのを躊躇している人は、臆せず手に取ってみてくださいな。思っている以上の収穫があるはず。変な戸惑いで世界の新しい学習の潮流を知らないなんてもったいない!

橘玲 著 『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

さて、『ウェブで学ぶ』は学ぶ者は世界が広がる、報われるといった前提で書かれているわけですが、かたや『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』は、「やればできる」では残酷な世界を生き延びることはできなくて、「やってもできない」ことがあることを前提に書かれています。橘玲さんのこういう主張は自己啓発的胡散臭さがなくて好きです。今この時代に幸福とは何か?を空元気一図前向自己啓発本とは一線を画して、冷静に説明していて安心して読めました。好き嫌いはあるかもしれませんが、個人的にはとても好き。幸せについて、もちろんお金があるにこしたことはないけれど、評判という要素が少なからず影響するものとしている点は、評判を「信用」に置き換えるとホリエモンの本にも通じる気がします。

新・資本論 僕はお金の正体がわかった (宝島社新書)

新・資本論 僕はお金の正体がわかった (宝島社新書)

謎が多い橘玲さんですが、「ぼくは…」で始まる過去のエピソードに触れる部分がちらほらあり、楽しく読めました。

「やってもできない」ことを知っても、そう悲観することはなさそうです。それを自覚した上で、幸せになることを考えればいいだけなのだから、という一冊。


そんなこんなの二冊でした。学びの未来を前向きに考える『ウェブで学ぶ』と、「やってもできない」現実を冷静に考える『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』、どちらもおすすめです。

次は何を読もうかな(^^)

■ 余談

橘玲さんと言えば、小説も。私のノマド的生活への憧れは、橘小説の影響が大きい気がします。

永遠の旅行者 (上)

永遠の旅行者 (上)

永遠の旅行者 (下)

永遠の旅行者 (下)

文庫も出ているのですが、ハードカバー版の表紙の方が好きです。また読みたいな。